ICT活用教育のヒント

知っておきたい!無線LANの基礎知識

無線LAN環境・機器が増えてくる

無線LAN環境タブレット端末の整備を検討・実施されている教育委員会様が増えています。画面に触れて操作できる直感性、持ち運びのしやすさ、内蔵カメラの使いやすさなどが、従来の機器に比べて高い評価を受けています。現在、複数の企業からさまざまなタブレット端末が販売されており、情報収集しながら慎重に検討しておられる整備担当者の姿を見かけます。

しかし、タブレット端末には有線LAN端子が搭載されておらず、ネットワークには「無線LAN」で接続することが前提になっている機種も多いため、タブレット端末の導入に伴って、無線LAN環境を整備されることが多いことに注目しなければいけません。

無線LANの規格や技術は10年前に比べるとずいぶん進化し、今ではスマートフォンや携帯型ゲーム機など、家庭でも利用されることが増えてきました。しかし、タブレット端末が整備された学校では、無線LANが適切に整備されていないことに起因するトラブルを目にすることが増えています。

このコラムでは、教育委員会様の整備担当者だけでなく、実際に授業でタブレット端末を使われる先生方にも、無線LANについてご理解いただき、快適にご利用いただけるよう、できるだけ簡単に説明しようと思います。

無線LANとは何か?

「無線」とは、線(ケーブル)のない方式・方法を示す言葉です。例えば、アマチュア無線や船舶無線のように、「線のない状態で行う電気通信方法」を示す際に、略して「無線」と表現されてきました。身近なものでは、先生方がご使用になっている携帯電話も、無線となり「電波」を使って通信しています。同様に、コンピュータの無線LANも、「電波」を利用しています。

また、LANとは、ローカル・エリア・ネットワークの頭文字をとった略称で、学校などの「限られたエリア内で、複数のコンピュータやタブレット端末が通信を行うための技術」です。つまり、無線LANとは「ケーブルがなくても、電波を使って学校内で通信できる環境」と考えていただければと思います。

「電波の干渉」が無線トラブルの原因に

このように、電波を利用して通信を行う無線LANですが、この電波というものは文字どおり「波」です。同じ場所で電波どうしがぶつかると波が干渉をおこします。例えば静かな水面に石を2つ投げ入れて、できた波紋が水面でぶつかると波が乱れてしまうのと同じです。

波が乱れて通信がうまくできなくなる場合がある

無線LANの場合でも、この波どうしの干渉が起こると「インターネットにつながりにくい」「動画が途切れる」といった「通信障害」が起きてしまう場合があります。同じ教室で、同じ時間に、いくつもの電波を利用すると、電波どうしが干渉し合ってうまく通信できなくなる現象が起こり得ます。

周波数を分けて整理し、管理ツールの利用も

「電波」の特徴として周波数というものがあります。ラジオも電波を利用しますが、同じ空間であっても「周波数」を変えれば、複数の局の放送を聞くことができます。ラジオだけでなく、携帯電話やトランシーバー、警察無線、航空無線、気象レーダーなど、電波を利用するものは多数ありますが、これらは同じ周波数を使わないようにすることで、お互いの混信や通信障害を防いでいます。

現在、コンピュータの無線LANでは、一般家庭や学校、企業向けに、主に「2.4GHz帯」と「5GHz帯」という周波数帯が利用できることになっています。しかし家庭用コードレス電話や電子レンジなども、同じ「2.4GHz帯」の周波数帯の電波を利用するため、同時に利用すると通信障害が発生することがあります。

学校で無線LANを利用する際は、異なる用途で同じ周波数の電波を利用しないようにすることが大切といえます。

プールに例えると、コース分けされていないプールで、それぞれが思い思いに泳ぐと、ほかの人にぶつかってしまい、うまく泳げません。しかし、コースを分けて進行方向も決めることで、スムーズに泳げます。

電波での通信をプールに例えると…

これと同じように、無線LANも周波数帯を細かく区切ることで複数のコースを設け(チャンネル設定)、データが流れる順番や方向を整理することでスムーズな通信を確保するようにしています。

この時、どれくらいの端末数で、どれくらいの大きさのデータをやりとりするかによって、用意すべきコースの幅や数が変わってきます。ただし、プール全体の大きさは変わりませんので、コースを増やすほど1コースあたりの幅は狭くなります。

また、プールのコース分けは目に見えますが、無線LANのコース分けは目には見えません。現状を確認するためのツールがないと、障害が発生した場合にも、どこが問題なのかがわからず、どんな対応が必要かもわからなくなるのが無線LANです。

取り扱うデータの大きさにも注意が必要

先ほど、チャンネル設定をプールのコース分けに例えましたが、今度は「流れるプール」を想像してください。流れるプールにも同じくコース分けの仕切りを入れたとしましょう。流れるプールに、浮き輪を着けた人が浮かんでいると水の流れに従って一定の速さで流れていきます。これがデータの流れだとします。

そのプールに浮かぶのが、体重が軽い小さな子どもなのか、関取のような大きな体の人なのかでは、流れる速さは大きく変わります。もし同じコースに、関取のような大きな体の人が一度に10人も入ろうとしたら、どうなるでしょう。

無線LANを利用している場合は、コース分けなどをきちんと整備するだけではなく、利用者自身が取り扱うデータサイズも意識しないと、通信トラブルが起きやすいので注意が必要です。

(山本 和人:Sky株式会社 ICTソリューション事業部)

(2015年9月掲載)