授業でのICT活用

なぜ雨は降るのか

授業の様子
本時のねらい

1時限目の授業では、各グループに異なる実験をさせて、タブレット端末で実験の様子を撮影させる。続いて2時限目の授業では、撮影したものを使って、おでかけバズとジグソー活動を組み合わせて、グループ同士の交流を行い、雨が降るメカニズムを理解させる。

授業の実際

「冷たい雨」説の考え方に基づいて、雨が降るメカニズムを3つのピースに分けて、それぞれに相当する実験をさせた。1つ目は夜店などで売られている吹き玉、2つ目はホットアイス(酢酸ナトリウム)の過飽和状態からの結晶化、3つ目は温度計による雲底の温度の測定である。動画や写真を撮りながらグループのメンバーと楽しそうに実験していたのが印象的であった。そのあと、「デジタルワークシート」に実験からわかったことをまとめた。続いての2時限目はグループで実験したことからわかったことを隣のグループに画面を見せながら説明させた。そして、共有した情報(ピース)を組み合わせて、冷たい雨説を生徒たちで考えた。

単元計画(全7時間)
第1次 理科室の水蒸気を集めよう(1)
第2次 湿度が100%になる露点を測定しよう(2)
第3次 雲や雪ができる理由を考えよう(2)
第4次 なぜ雨は降るのかを考えよう(本時1/2と2/2)

本時の展開(1時限目:実験の授業)

学習の流れ 主な学習活動 指導のポイント
(タブレット端末活用場面)

1.雨が降る原因を考える

個人で雨が降る原因を考えてワークシートに書く。  

2.グループで実験をする

3つある実験から、グループで2つの実験を行う。

1実験の様子を撮影させる。

3.グループで実験結果から分かることをまとめる

話し合いながら、タブレット端末に分かったことを書いて、個人のワークシートにも書く。

1撮影したものと説明を1つのシートに収めさせる。

本時の展開(2時限目:情報交流の授業)

学習の流れ 主な学習活動 指導のポイント
(タブレット端末活用場面)

1.前時をふりかえる

タブレット端末を見ながら、説明の準備を行う。

2前時に書き込んだシートを確認させる。

2.グループ間で交流する
【おでかけバズ】

隣のグループにタブレット端末を見せながら、2つの実験から分かったことを説明する。

・撮った動画などを再生させながら説明させる。

3.雨が降るしくみを考える
【ジグソー活動】

集まった情報をもとにグループで雨が降る原因を考えて、タブレット端末に書く。

2イラストを使って他の人がわかりやすい工夫をさせる。

4.クラス全体の発表を通して、個人でまとめる

タブレット端末に書き込んだものをプロジェ クタで投影してクラス全体に説明する。 その後、個人のワークシートにまとめる。

3画面比較の機能を活用して、複数提示して拡大する。

タブレット端末活用のポイント(効果と児童生徒の反応)

もう一度見返すことで再発見する
教材配付、デジタルワークシート、カメラ

教師用の端末から配付したシートに、実験中に撮影した動画や写真を貼り付けさせて結果やわかったことをまとめさせた。自分たちが撮ったものを何度も見返しているグループが多く、メンバーとわかったことを考察する時に役立っていた。実験中には気づいていなかったことも画面を通して再発見しているグループもあった。また、隣のグループとの情報交流するときにも、画面を見せながらだと、実験の様子を再現できるので、伝えようとする内容がわかりやすいようである。

前回の考えとシームレスにリンクする
個人フォルダ(サーバへの保存)

理科では、今回のように実験の時間と考察の時間を分けることがある。サーバに自動的に保存されているデータはグループごとに管理されているので、前回作成したシートの続きからすぐに始めることができる。実験の時間に書いていたことを時間が経ってからもう一度見返すと、頭の中が整理されているのか、シートを書き直して表現を工夫するグループが目立った。また、放課後、教師用端末からじっくりと生徒の考えと向き合うことで生徒がわかっていないことを発見することにつながった。

表現の違いに気づき、再構成する
画面比較、マーキング

グループでの情報交流を終えてから、3つのピースを並び替えて、雨が降るメカニズムをグループで考えさせた。自分たちなりの図を書かせたとき、書きかけの2つの図をその場で紹介して、人に伝わりやすい説明図とはどういうものであるのかを考えさせた。最終的にできあがった図をプロジェクタで拡大して、並べて閲覧しながら、自分たちの考えと他のグループの考えを比べて見ることにより、より真に迫った冷たい雨説を考えさせることができた。

こんな場面でも使える!実践を振り返って

移動しながらでも教員用タブレットでリアルタイムに把握

今、生徒がどんなことを考えているかを、移動しながらでも教師用のタブレット端末を用いれば、リアルタイムに把握できた。タブレット端末なしではなかなかできない経験である。気になったグループには近づいて生徒の考えを直接聞くことができた。また、場合によってはそのグループの考えた画面を瞬時にプロジェクタを使って大きく映し出すことで、他のグループへの指導につながったのは便利でとても良かった。

(2016年3月掲載)