授業でのICT活用

図形を回転させて対称を調べよう

授業の様子

■ 本時のねらい

単元計画本時のねらいは、「対称という観点から、図形を分類整理したり性質を説明したりすることができる。(数学的な考え方)」とした。

本時の学習に至るまでには、線対称な形の性質やかき方、次いで点対称な形の性質やかき方の学習を行ってきている。その上で、本時の「正多角形と対称性」という学習が設定されている。

■ 本時の展開

学習の流れ 主な学習活動 指導のポイント
(タブレット端末活用場面)
1.既習を確認し本時の課題を知る 既習の三角形と四角形の対称性について確認する。
<正多角形は対称か>
3前時の学習内容を操作説明も兼ねて確認する。
2.さまざまな正多角形を調べる 正五角形、正六角形、正八角形、円、星型について対称かどうかを調べる。 2「デジタルワークシート」を配付する。
・ 配付された「デジタルワークシート」で正多角形の対称性を調べる。
3.表から分かること気づくことを出し合う 線対称か、対称の軸の数、点対称かという結果から気づきを考える。 3正五角形と星型についてなぜ同じ結果になるのか確認する。
4.学習を振り返る    

■ 授業の実際

教員機画面を大型ディスプレイに投影し、前時を振り返る前時には、四角形と三角形の対称について調べた。そこで本時の導入では、「二等辺三角形の対称の軸は何本であったか。点対称といえるか。正方形の対称の軸は何本か。点対称といえるか」という内容で既習事項の確認を行った。

また、本時の学習内容である正多角形に意識が向くように「四角形について学習したので次は何だと予想しますか」と問うた。

次にタブレット端末の操作の説明を行った。単なる操作説明ではなく、ここでも既習の確認ができれば良いと考えた。点対称な形かどうかを判断するためには形を回転させなければならない。タブレット端末を活用することで形の回転が実に容易にできる。回転のさせ方、対称の軸となる直線の引き方を大型ディスプレイに提示したタブレット対応授業支援ソフトウェア『SKYMENU Class』の「デジタルワークシート」を用いて、説明していった。

対称かどうかなどの調べたことを記入する紙のワークシートと各グループに1台のタブレット端末を配付した。タブレット端末には「デジタルワークシート」で作成した教材を配付しておき、教材を使って調べさせた。調べる内容は、「線対称か」「対称の軸は何本か」「点対称か」の3つである。

全員が必ず操作することを確認し、分かったことを出し合い「確かにそうだね」とグループのメンバー全員が納得できたら記入するように指示した。なお、調べる形は、正五角形、正六角形、正八角形、円、星形の5つである。

タブレット端末の操作に多少戸惑いながらも相談しながら対称の軸を引いたり、回転させたりして結果を確認して表に記入していた。

教員機で各グループの進捗を確認しながら机間指導正多角形では、回転させて2つ並べた形がぴたりと重なると歓声を上げたり、円の対称の軸の数は際限なく引けることに気づいていたりしていた。教師は手元のタブレット端末で各グループの様子を確認し、進みの遅いグループを確認して必要な支援を行った。

すべての形を調べ終えたグループから、記入された表を見て分かることや気づくことを箇条書きでノートに書くように指示した。さらに、黒板にも書くように指示。黒板に書かれたものの中から、「正五角形と星型の結果が同じだ」という意見を取り上げ、なぜ同じになるかをタブレット端末の操作を大型ディスプレイに提示して、全体に説明した。結果だけを見るとただ単に「同じ」だという気づきで終わってしまうが正五角形と星型を並べて表示した後に、移動させて重ねて提示することで「星型は正五角形の辺の一部を変形させた形」であることが一目で分かる。子どもたちからも「なるほど」などの声が上がっていた。

最後に授業のふり返りを書き、本時の学習を終えた。

タブレット端末活用のポイント(効果と児童生徒の反応)

らくらく「教材配付」としっかり「ファイル管理」
デジタルワークシートの一斉配付
個人フォルダ

ログオンすればどの端末からでも「個人フォルダ」を利用できるデジタルワークシートを用いて、教師側で事前に作っておいた教材をすべてのタブレット端末にその場で一斉に配付した。直前まで既習内容の確認として、大型ディスプレイに提示されていて、見ていたものが送られてくる。子どもたちの学習意欲が高まったままの状態なので、すぐに各グループで調べる学習に入ることができた。さらに、各グループで調べた結果は自動的に『SKYMENU Class』のサーバ上の各端末の決められたフォルダ「個人フォルダ」に保存される。教師用のタブレット端末から各個人フォルダにアクセスし、いつでも確認できるので、評価や次時の学習にもつなげやすい。

回転させ重ねることで分かる
デジタルワークシート

小林先生がデジタルワークシートで作成された教材デジタルワークシートの画面上に置かれている正多角形は選択ツールを使用することで回転させたり、移動させたりできる。点対称かどうかを確かめるには、2つ並べた正多角形の内、一つを回転させ、もう一つに重なるかどうか移動させて確かめるとすぐに分かる。当たり前のようだが、この操作によって、点対称かどうかの結果は確実に見て分かるので、学習内容の理解につながる。子どもたちは「重なるかな」と予想を立てながら操作したり結果を見て「やっぱりね」「重なった!」などの声を上げていた。

教師用タブレット端末と大型ディスプレイの連動で分かる
教員機画面の投影

教員機画面を大型ディスプレイに投影し、全員で確かめる授業の終盤には、子どもたちから出された気づきをもとに、正五角形と星型の結果がなぜ同じになるのかを説明した。その際に、デジタルワークシート上に正五角形と星型を並べ、ぴたりと重なることを示すと、子どもたちは食い入るように大型ディスプレイに見入っていた。そして「星型は五角形が変形した形だ。」などの声が上がった。授業終盤の短時間で、確実に結果を示したい場面では、子どもたちに操作させるよりも一斉指導の方が良い。そのときに教師用タブレット端末と大型ディスプレイが連動することで結果が示しやすくなる。

こんな場面でも使える!実践を振り返って

タブレット端末は、算数の図形の学習で広く活用できる。例えば、拡大図と縮図の学習においても一方の図形を拡大や縮小することでもう一方の図形にぴたりと重なることを示すことができる。図形の学習は何となく分かったつもりになりやすい。だからこそ、自らが操作し仲間と予想したり気づきを共有したりしながら学習を進めることができるタブレット端末には魅力を感じている。

(2014年11月掲載)