授業でのICT活用

【教育情報化最前線】学校法人 江戸川学園 江戸川学園取手小学校 4年生以上の全児童がWindows OSのタブレット端末を活用リーダーの育成をめざし、ICT教育を重視

平成26年4月に茨城県初の小・中・高等学校12年間の一貫教育校として開校した学校法人 江戸川学園 江戸川学園取手小学校。「心豊かなリーダーの育成」をめざす同校では、「道徳教育」「英語教育」「国語教育」そして「ICT教育」を重点的に取り組まれています。コンピュータ教室をタブレット端末で整備するだけでなく、4年生以上からは個人負担で購入したWindows OSのタブレット端末を授業で活用しています。同校の取り組みについて、若林 富男 校長、吉井 毅 教諭、内丸 友之 教諭に伺いました。

学校法人 江戸川学園 江戸川学園取手小学校 若林 富男 校長、吉井 毅 教諭、内丸 友之 教諭

ICTを道具として使いこなす、心豊かなリーダーを育む

開校して4年目となる本校には、1年生から5年生まで433名の児童が在籍しています。「心豊かなリーダーの育成」を教育目標に掲げ、グローバルな社会、情報化が進展する社会において、リーダーとして国際貢献できる人材の育成をめざしています。そのための施策として、「道徳教育」「英語教育」「国語教育」「ICT教育」の4つを重点的に取り組んでいます。

「道徳教育」では、スティーブン・R・コヴィー著の「7つの習慣」をベースとした教育プログラム「リーダー・イン・ミー」を、私立小学校としては日本で初めて取り入れています。自分を叱咤激励し、自分の中のリーダー性を高める独自の教育活動を展開しています。

「「英語教育」では、実際のコミュニケーションの場で使える英語力の育成をめざしています。ネイティブの教員を含めて6人の英語教員が指導しており、1年生から週2時間、5年生からは週3時間授業を実施しています。

「英語教育とともに重視しているのが「国語教育」です。私たちは言葉で思考し、表現しますから、「読書指導」などを通じて児童の国語力を高め、すべての学びの基礎となる力を育みたいと考えています。また、国際舞台で活躍する人材にとって自国の言葉や文化に対する理解は欠かすことができませんから、さまざまな日本の伝統文化に触れさせながら授業を展開しています。

これらの教育活動と同列で「ICT教育」を掲げているのが本校の特長です。低学年のうちからICT機器に慣れ親しめるよう、さまざまな学習活動で積極的にタブレット端末を活用しています。平成28年度から、4年生以上は個人負担でタブレット端末を購入いただき、毎日の学校の授業で使っています。手元に本があれば読書がしたくなるように、手元にタブレット端末があることで、児童が必要なときに道具の一つとして気軽に使える環境をめざしています。

PC教室の整備をきっかけにタブレット端末整備を推進

タブレット端末が整備されたコンピュータ教室。楕円型の机が設置され、対話が生まれやすい学習空間になっている本校のタブレット端末の整備は、平成27年度のコンピュータ教室整備から始まりました。

児童たちが将来、リーダーとして国際貢献するためには、知識や技能はもちろんのこと、自ら学ぶ意欲を持ち、自ら課題を見つけて学ぶ力や主体的に判断・行動し、よりよく問題解決が図れる資質や能力が求められます。それには、問題解決の手段の一つとしてICTを自在に使いこなせる力が必要です。

このような力をつけるためには、日々の学習活動のなかでコンピュータを気軽に使える環境が望ましいと考え、コンピュータ教室の端末についてはデスクトップ端末ではなくタブレット端末で整備し、校内外のさまざまな場所で利用できる環境を整えました。また、タブレット端末はWindows OSを採用し、クレードルを介してマウスやキーボードと接続しているので、従来のコンピュータ教室と同様に使うことができます。この整備以降、教員が校務で利用するコンピュータも、順次タブレット端末に切り替えています。

そして、翌平成28年4月からは4年生以上を対象に、個人負担で購入した1人1台のタブレット端末を使った授業を開始しています。これらすべてのタブレット端末に、学習活動ソフトウェア『SKYMENU Class』を導入しています。

『SKYMENU Class』の[ユーザ情報管理]機能は、Active Directoryと連携してユーザ情報を一元管理できるので、教員と児童のユーザ情報を登録し、1人ひとりにユーザIDとパスワードを発行しています。ユーザを登録すると、サーバ上に自分専用の[個人フォルダ]が作られるので、児童は6年間[個人フォルダ]でデータを管理します。

コンピュータ教室は、クレードルを介してキーボードやマウスと接続。教員、児童(個人購入)のタブレット端末もキーボードを着脱できるため、ノートPCとしても利用できる

Windows OSを採用した5つの理由

(1)世界の企業や組織でもっとも広く使われている(2)教育に適している(3)データの扱いやすさ(4)デジタル教科書への対応(5)安定した運用の継続的な実現本校がWindows OSを採用した理由は大きく分けて5つあります。

1つ目は、今、「世界の企業や組織でもっとも広く使われている」コンピュータのOSであるということです。将来、彼らが仕事に就くことや、当学園の中・高等学校との学びの連続性を考えればWindows OSはもっとも適した選択でした。

2つ目は、「教育に適している」ということです。主に個人や家庭での利用を想定し、家電製品のような使いやすさを備えた端末やOSは、簡単な操作で格好の良いプレゼンテーション資料や映像作品を作れます。手軽に使えるので大変便利です。

しかし、ICT環境をコンピュータサイエンスを学ぶ一つの教育プログラムと捉えたとき、ファイルやフォルダの概念などICTの中身の部分に触れ、考えながら利用するWindows OSが本校の教育により適していると考えました。

3つ目は、「データの扱いやすさ」です。Windows OSは、ファイルやフォルダの概念があり、データを共有しやすいという特長があります。またWindows OSのタブレット端末の多くは、USBポートやSDカードスロットが搭載されているので、データの出し入れが容易に行えます。実際に、無線LANが使えない場面や大きな容量のデータをやりとりする場面がありますから、助かっています。

4つ目は、「デジタル教科書への対応」です。デジタル教科書の多くはWindows OSに対応しています。

5つ目は、「安定した運用の継続的な実現」です。近年、ソフトウェアやOSのアップデートが頻繁に行われるようになり、OSによってはアップデートで大幅に仕様が変わってしまい、それまで使用していたソフトウェアやアプリケーションが突然使えなくなってしまうと授業に支障をきたします。

Windows OSはアップデートによる変化が比較的少ないため、より安定した運用を継続できると判断しました。

道具の一つとして、自由な発想で活用できるように

タブレット端末を囲んで話し合う姿は教室の至る所で見られる児童のタブレット端末は、毎年4年生になる児童を対象に本校が推奨するタブレット端末を購入してもらっています。個人所有なので、児童はタブレット端末を毎日自宅に持ち帰って充電を行い、毎日学校に持ってきます。

児童は登校したら、本や辞書などと同じように教室のロッカーに保管しています。いつでも取り出しやすく、使いやすいところに置くことで、道具の一つとして気軽に活用できるようにしています。教室に充電保管庫などは設置していないので、もし充電を忘れたり、電池が切れたりした児童がいれば、各教室に2つ用意してある電源アダプタで充電させています。

毎日の授業でタブレット端末を使用するにあたり、最低限の活用ルールを定め、フィルタリングソフトによるWebサイトの閲覧制限を行っていますが、基本的には自由な発想で使わせています。

児童が自由にインターネットに接続できる環境をリスクと捉える場合もあるかもしれません。しかし、その先にはさまざまな可能性が広がっています。本校では、可能性をふさぐような対処をするのではなく、教員、児童がリスクと向かい合うなかでICTの適切な使い方を学ばせたいと考えています。1人1台環境で毎日使っているからこそ、教育の機会はたくさんあると思います。

自発的に情報をまとめ、
プレゼンテーションしたりする児童が増加

[カメラ]を中心に、活用が広がる

ゲーム中のチームの動きをタブレット端末で撮影し、動画で振り返る。 具体的な話し合いが行われた

教員も、児童も、頻繁に利用しているのは[カメラ]機能です。例えば、体育のタグラグビーの授業で、ゲーム中のチームの動きを動画で撮影。試合後、チームで動画を見て作戦を練りました。動画があることで状況を客観的に分析し、具体的な話し合いが行えます。児童の中には、根拠となる場面をタブレット端末で示してわかりやすく説明する児童もいます。

算数の授業では、考えをまとめたノートを[カメラ]機能で撮影させています。そうすることで、発表の場面でタブレット端末画面をプロジェクタに投影するだけで素早く発表できます。簡単な活用ですが、効率よく発表ができることで授業がテンポ良くなり、児童の発表時間を十分に確保することができます。その際、[学習者機画面の一覧表示]機能を使えば、教員の手元で1人ひとりの進捗状況や考えを把握できるので、より適切な指導を行えます。授業後には板書を[カメラ]機能で撮影し、[教材配付]機能で児童の[個人フォルダ]に一斉配付しています。児童はきちんとノートをとっていますが、後で写真が送られてくるため、余裕を持って授業に臨んでいるように感じます。児童が欠席した場合も、自分の[個人フォルダ]に黒板の写真が届いているので後から確認することができます。

どのようなソフトとも使える『SKYMENU Class』

国語では、音読の宿題で[カメラ]機能の動画撮影を利用しています。自宅で自分が音読する様子を動画で撮影させ、もっともうまくできたものを提出させています。映像を提出しなければなりませんから、宿題が確実に行われますし、映像を元に適切に指導できます。

また、プレゼンテーションについて指導する際、協働で1つの資料をまとめさせたいときに[発表ノート]の[グループワーク]機能を活用しています。簡単な操作で友だちのスライドを共有できるのがメリットです。学習内容によっては、PowerPointやSwayなどでまとめたりするのですが、その際も『SKYMENU Class』の[学習者機画面の一覧表示]機能や[教材配付]機能を使えるので助かっています。教員、児童がさまざまなソフトウェアを活用する本校において、どのようなソフトウェアとも組み合わせて使える『SKYMENU Class』は欠かせないツールです。

タブレット端末で児童の可能性が広がり、主体的に取り組む意欲が高まる

自分のノートの写真を提示して発表する、授業後、児童の[個人フォルダ]に配付された板書の写真

1人1台のタブレット端末活用を開始して約1年半。学校生活のさまざまな場面で、タブレット端末を使って自発的に情報をまとめたり、プレゼンテーションしたりする児童が増えています。

このようなタブレット端末活用の広がりの背景には、自分自身を叱咤激励し、自分の中のリーダー性を高めるという本校の「リーダーシップ教育」の考え方があります。本校の教員は、児童がリーダー性を発揮し、「何かをやりたい、やってみたい」と思ったときに、その取り組みを全力で支えます。そこに、タブレット端末という万能なツールが加わったことで、彼らの可能性が広がり、主体となって物事に取り組もうという意欲が高まっています。

平成30年度には、いよいよ4年生から6年生までの児童がタブレット端末を所持するようになります。児童のリーダー性をさらに高め、主体的な学びから深い学びへと至るために、タブレット端末をどのように活用できるのか。「1人の100歩ではなく100人の1歩」をスローガンに、全教員で授業づくりを進めたいと考えています。

(2017年10月取材 / 2018年3月掲載)