授業でのICT活用

チームで推進する、校内のICT活用 全教員のタブレット端末活用をめざす

茨木市では、平成26年度より毎年、市内の小中学校4校がICT活用の研究・普及に取り組む「ICT授業デザイン推進校」として研究に取組んでいます。平成28年度のICT授業デザイン推進校である茨木市立畑田小学校は、情報処理室(コンピュータ教室)に整備されたタブレット端末と持ち運び可能な無線LANアクセスポイントを活用して、さまざまな学年・教科でICT活用授業を展開されています。同校のICT活用推進の取組みについて、首席 桂木将之 先生、西川祐輝 先生、加藤吉徳 先生に伺いました。

首席 桂木 将之 先生、西川 祐輝 先生、加藤 吉徳 先生

コンピュータ教室の端末をノートPCからタブレット端末へ

本校は、茨木市教育委員会の平成28年度「ICT授業デザイン推進校」として「楽しく進んで参加する授業づくり」を研究目標に、平成27年度夏に整備されたタブレット端末を活用した授業づくりを進めています。

タブレット端末は、情報処理室(コンピュータ教室)の機器更新の際に従来のノートPCの置き換えとして42台整備されており、情報処理室では、キーボードとマウスを接続してノートPCのように利用しています。タブレット端末とともに無線LANアクセスポイントが5台整備されており、1台は情報処理室に常設し、残り4台(1台は茨木市教育センターからの貸与)はタブレット端末とともに情報処理室から持ち出して普通教室や特別教室、体育館などで利用しています。あわせて、授業支援ソフトウェアとして、タブレット対応授業支援・学習活動支援ソフトウェア『SKYMENU Class』が整備されています。

ICT授業デザイン推進校に立候補

当市では、平成21年に小学校普通教室に50インチの大型テレビが整備されるなど、普通教室におけるICT環境整備が積極的に進められてきました。全普通教室に教材提示装置や教育用PCがそれぞれ1台ずつ常設されており、体育館や特別教室を含めた校内ネットワークの敷設も完了しています。このような充実した環境により、ICTを活用した教材づくりや教材の提示に慣れている教員が多く、整備されたタブレット端末についても「どのように授業で有効活用できるだろうか」と課題意識を持っている教員が多くいました。

さらに昨年度、本校の事務主査が校内研修で教職員1人ひとりにタブレット端末を配付して研修を行ったことが、タブレット端末の有用性を肌で感じる契機となり、同年度末にタブレット端末をより効果的に活用するために平成28年度の「ICT授業デザイン推進校」に参加することを職員会議で決定しました。

情報部がチームで校内のICT活用を推進

本校では、情報部5名の教職員が中心となってICT活用を進めています。低・中・高学年の担任と担任外から、それぞれ1名ずつ情報部のメンバーに加わってもらい、チームとして協力して取り組んでいます。「ICT活用のスペシャリストではなく、全教員がICT機器を活用した授業ができることをめざそう」という考えを共有し、スモールステップで進めています。

情報部の役割の一つに、教員のICT活用をサポートしてくれる外部の支援人材「ICTデザイナー」のコーディネートがあります。ICT授業デザイン推進校にはほかの学校よりも多く、週1回半日訪問してもらえるので、この機会を最大限に生かして、系統立ったサポートが実現できるように情報部がスケジュールの調整を行っています。

校内研修で1学期の実践を動画で振り返る

校内研修は、これまでに3回実施しており、1回目の研修会は6月に実施しました。この研修会では、タブレット端末や授業支援ソフトウェア『SKYMENU Class』の基本的な操作方法の習得をめざしました。そして1学期の目標「すべての学年でタブレット端末を使った授業をすること」「どの教科でもタブレット端末を使った授業をすること」を全教員の共通理解とし、達成に向けて動き出しました。

まずは低・中・高学年の校内情報部の教員が率先して授業を行うことで、ほかの教員の刺激になるとともに、活用イメージを持ってもらう機会にもしました。学年が近い情報部員には実践の相談もしやすかったようで、6月から7月の間にほとんどすべての学年・教科でタブレット端末を使った授業を実施できました。

1学期の実践を映像で振り返り共有1学期に実施したタブレット端末活用授業の様子は、先生方にお願いして写真や動画で記録を残してもらいました。これは単なる記録目的ではなく、夏の校内研修で映像をもとに授業やICT活用を振り返ることをねらいました。研修では、茨木市教育センターの長谷川指導主事を講師として招きました。身近な同僚の実践ということもあり、研修に参加した教員も熱心に実践映像を見ていました。特に、姿勢の良い子どもを[カメラ]機能で撮影し、大型テレビに投影して紹介するといった事例を紹介したところ、非常に有効な指導方法としてベテランの教員が共感していたのが印象的でした。他校の教員の例だけでなく、身近な同僚の好事例を共有することも効果的だと感じました。

このような研修を経て、2学期以降は「全教員が一度はタブレット端末を活用した授業をすること」を目標として実践を重ねていき、すでに平成29年1月の時点ですべての教員が実践し、目標を達成できました。

低学年から高学年まで、全教科・全学年でタブレット活用に取り組む

実践1年・算数:かずをせいりしよう

机間指導しながら、拡大提示したり書き込んだりできる「かずをせいりしよう」の単元では、教員がタブレット端末を活用しました。本時では「魚」「たこ」「ヒトデ」がそれぞれいくつあるのかを数えるのですが、子どもたちに配付したプリントと同じ画像を『SKYMENU Class』の[投影]機能を使って大型テレビに投影しました。教員は教員機を片手に机間指導しつつ、画面を動かしたり、[マーキング]で書き込んだりして数え方を説明していました。

子どもたちはテレビ画面を見ながら、自分のプリントに書き込んでおり、[マーキング]や[拡大表示]などの視覚的な支援が、特に低学年で効果が高いことを感じました。

実践3年・体育:跳び箱運動

跳び箱を跳ぶ様子を[カメラ]で動画撮影「跳び箱運動」では、体育館でタブレット端末をグループ1台で活用しました。グループ内でお互いに跳び箱を跳ぶ様子を撮影し合い、跳んだ後に自分の動画を視聴させました。自分が今日の目当ての動きを達成できているのかどうかを子どもたち同士で確認していました。自分の運動の様子は客観的に見ることが特に難しいので、[カメラ]機能で撮影してすぐに動画で客観的に振り返れることは非常に有効でした。

特に運動が苦手な子でも、動画ならポイントがつかめるので、具体的に話し合いに参加できる点が良かったです。『SKYMENU Class』には、動画を並べて表示できる[動画比較]の機能もあるので、良い飛び方の動画と自分の飛び方を比べたりするとさらに効果的です。

実践5年・音楽:演奏会をしよう

録音ではなく、演奏の様子を動画で記録する音楽でもグループ1台のタブレット端末を使って、子どもたちが「リズム」をとれているかどうかを動画で確認しました。録音するだけでも良いのですが、[カメラ]機能で演奏している子どもの様子を録画して振り返ることで、「空打ちができているかどうか」といった拍の取り方について具体的な話し合いが行われていました。[カメラ]機能は体育などでよく使われていますが、音楽でも有効に使えると思います。

実践支援学級・算数:図形の拡大図、縮図

支援学級では、ドリルソフトなどを使った反復学習や視覚的な支援を目的に活用しています。主に視覚支援としては、教員機で撮影したプリントなどの画像を学習者機に配付し、学習者機画面上で大きく映し出しています。

端末画面上で画像を拡大し、[マーキング]で確かめる特に算数の図形の学習で効果が高く、例えば「拡大図」「縮図」の学習では、グラフの目盛りが細くて、子どもたちがわかりにくいのですが、各学習者機にグラフの画像を配付して表示させておけば、子どもたちがプリントの写真を[拡大表示]し、[マーキング]で線を書き込みながら試したりできます。子どもたちからは「拡大教科書よりも、タブレット端末を使ったほうがわかった」「自分でここが何マス目と見てわかった」といった感想があがっており、確かな活用効果を感じています。

「発表ノートに書き込むこと自体が楽しい」子どもの意欲の高まりを学力向上につなげたい。

「次の時間も使いたい」端末や無線APの不足を感じる

タブレット端末や無線LANアクセスポイントは、情報処理室の充電保管庫で管理しています。情報処理室から持ち出す際は、「誰が」「何を」「何台」持ち出しているのかを管理表に記録し、使い終わったら必ず充電保管庫に返却することをルールにしています。

しかし、持ち出せる無線LANアクセスポイントが4台しかないことや、使うたびに情報処理室の保管庫から出して戻さなければならないので、教員の手間になっています。本校は大きな規模の学校ではないので使い回しが実現していますが、教員数の多い大規模校では運用が難しくなると思います。

このような持ち出しや返却の手間はありますが、一度授業で使えば、その便利さがわかり「私も使いたい」という教員が増えてきています。

今後は教員が使うタブレット端末や無線LANアクセスポイントが教室に常設され、いつでも使える環境が整うことが望ましいと考えています。

子どもの意欲や思考力、表現力の向上に効果

これまでの本校の実践を振り返ると、学習に対する意欲の高まりを感じています。例えば、授業ではよく[学習者機画面の一覧表示]を大型テレビに提示したり、子どもたちが[発表ノート]に書き込んだ内容を投影して紹介したりします。このような仕組みがあることで「僕も、私も書かなければ」と、授業に積極的に参加するようになっています。[発表ノート]に書き込むこと自体が楽しいので、この意欲の高まりを学力向上につなげたいと思います。

思考力、表現力の育成にも効果を感じています。3年社会で、商店街の見学にタブレット端末を持参させたときのことですが、商店街の工夫を[カメラ]機能で撮影させ、教室に戻ってからそれぞれが見つけた工夫を発表させました。撮影した写真に[マーキング]で印をつけたり、書き込んだりできるので、子どもたちは紹介したいことを明確にしながら発表していました。聞く側の子どもたちも視覚的に理解できるので、話を聞いて考えることができていました。まさにタブレット端末や『SKYMENU Class』が思考、表現のツールとして役立っていました。もし、デジカメで撮影して写真を映し出しただけであれば、同じように意見の交流が行われたり、思考が深まったりすることはなかったと思います。

今後、タブレット端末や『SKYMENU Class』が子どもたち1人ひとりの考えを広げたり、共有したりする部分でより大事な役割を果たすことに期待しています。

子どもだけでなく、教員も学ばなければならない

本校の活用はまだ始まったばかりで、すべての子どもたちがタブレット端末を使いこなして自分の考えを的確に交流できるわけではありません。子どもたちに経験を重ねさせ、思考力、表現力を育んでいきたいと考えています。

そして、私たち教員も学ばなければならないと思います。タブレット端末を通して出てきた子どもの考えや感想を広げ、ほかの子どもやグループ、学級全体とどのように結びつけ、つなげていくのか。さらに子どもたちの考えから「この子は、このように捉えたのではないか」と分析する力が必要になると思います。ここでも映像などを用いて「この場合は、どうしたら良かったのだろうか」と授業を振り返るような研修が有効だと思います。

子どもたちが興味を持つ授業づくりに向けて、実践の積み上げや教材研究はこれからも必要ですし、今年だけでなく来年も再来年も継続して実践することが大切です。教員間でノウハウの蓄積と共有をさらに進めたいと考えています。

(2017年1月取材 / 2017年4月掲載)

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