授業でのICT活用

タブレット端末が日常使いのツールに -授業だけでなく、学校生活のあらゆる場面で進む活用

東京都立川市立第一小学校(對馬 洋 校長)は、平成27年11月にWindowsのタブレット端末23台とタブレット対応授業支援ソフトウェア『SKYMENU Class』が整備されました。

導入からわずか半年という短期間で、教員の教材提示から児童のグループでの活用をはじめ、授業以外の学校生活のさまざまな場面で活用が進んでいます。同校の取り組みについて、三田 祐太 主幹教諭、濱野 文葵 教諭、高橋 知瑛 教諭に伺いました。

全学級担任にタブレット端末を配付

本校には平成27年11月に、Windowsタブレット端末が23台導入されました。教員用に16台、学習者用に7台を振り分けて活用しています。教員用のタブレット端末は、学級担任1人に1台付与し、そのほかの端末を専科の教員などで共有しています。職員室の充電保管庫で管理しており、朝、保管庫から取り出して、退勤の際に保管庫に戻すルールにしています。

すべての教室に、大型テレビ1台とワイヤレスディスプレイアダプタ(無線LANを介してテレビなどへタブレット端末などの画面を投影できる無線アクセスポイント)が設置されています。これによって、どの教室でも『SKYMENU Class』を使って大型テレビに教員機の画面を投影して教材が提示できるようになりました。

個人フォルダで教員・児童のデータを管理

本校では、校長をはじめ教員、支援人材の方、児童が利用するユーザIDを『SKYMENU Class』の[ユーザ情報管理]機能で管理しています。教員や支援人材の方には1人ひとりユーザIDを用意し、児童がタブレット端末を利用する場合は「学年・組・班の番号」で作成したユーザIDでログオンさせています。低学年の児童でもタップするだけで簡単にログオンできるように[かんたんログオン]機能を活用しています。

共有で使う学習者機には「復元ソフト」が入っているため、端末本体にデータが残りません。そこで、ユーザIDごとに作られるサーバ上の「個人フォルダ」を活用しています。児童が特別な操作をしなくても、撮影した写真や作成した作品が「個人フォルダ」に保存されるので、データを失ってしまう心配がありません。

ICTによる児童の意欲の高まりを生かす

本校は、学校教育目標を『自分で考え行動する子、心豊かで思いやりのある子、体をきたえ元気な子』としており、児童が主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」の実現をめざしています。そのために、タブレット端末などのICT機器は欠かせないツールでだと捉えています。児童がICTを使って発表したり、調べ学習をしたりする場面を多く作り、まとめ方や表現方法を自分自身で考える。そのような学習活動を積み重ねることで、さまざまな課題に対して主体となって取り組む児童が育つと考えています。

当然、アナログの教材・教具を使った活動も可能です。しかし児童は、鉛筆よりもタッチペンを持ち、ノートよりもタブレット端末の「発表ノート」を使ったほうがより意欲が高まり、積極的に取り組みます。これを学習の手段、道具として生かさない手はないと思います。

導入から半年、授業だけでなく、学校生活のさまざまな場面で活用進む

国 語お手本となる作文を撮影して、大型テレビに投影して説明

[カメラ]機能は、最も利用されている機能です。国語では、お手本になる作文の例をカメラで撮影して大型テレビに投影。[マーキング]機能を使って作文の書き方のポイントを示しました。低学年の児童には口頭での指示だけではなく、このような視覚的な支援が有効です。

また児童は、自分のノートが大型テレビに映され、前に出て発表できることが嬉しいようです。いつ紹介されても構わないように、ノートの文字を丁寧に書いたり、しっかりとまとめたりする児童が増えました。さらに「自分の考えを発表しよう」という意欲も高まっています。

本校には電子黒板が1台しかありませんが、『SKYMENU Class』とタブレット端末、そして大型テレビがあれば、電子黒板と同じことが実現できます。そして、机間指導中に紹介したいと思った児童のノートを、サッと撮影して紹介できるのは、電子黒板にはないメリットだと思います。

タブレット端末で「マーキング」しながら説明

算 数「発表ノート」で作成した教材で、三角形をなかまわけ

撮影したさまざまな三角形を「発表ノート」上で分類3年算数で、グループ1台のタブレット端末を活用しました。ストローで作ったさまざまな三角形を作り、それを児童に[カメラ]機能で撮影させ、教員が次時までに「発表ノート」に貼り付けて教材を作成。学習者機に配付し、グループで三角形のなかまわけを行いました。

学習活動は、[タイマー]機能を使って区切っています。大型テレビに大きく提示でき、数字だけでなく、円グラフやバーで時間の経過を視覚的に示すことができるので便利です。タイマーの音を自由に変更できるので、活動の区切りがネガティブな気持ちにならないように工夫しています。給食の準備などに活用している教員もおり、「もうこんな便利な道具なしでは教室にいけない」と思えるほど欠かせないものになっています。

外国語活動動画撮影で、ALTの先生の声を児童に伝える

外国語活動で、グループ1台のタブレット端末を活用して、英語でCM作りに取り組みました。週に1度、授業に来てくれるALTの先生に、CMについてアドバイスをしてもらい、ブラッシュアップさせたいと考え、リハーサルの様子をタブレット端末で撮影し、動画を見てもらいました。さらに、先生に動画を見てもらっている様子を教員が撮影することで、後日、児童にALTの先生からのアドバイスを届けられました。

このようにタブレット端末があれば[カメラ]機能で静止画や動画の撮影を気軽に行えます。また、撮影した写真を「発表ノート」に貼り付ければ、そのまま教材を作成できます。授業準備の負担は以前と比べて軽くなってきていると思います。

ALTの先生のコメントを視聴する

発表ノートで「新入生むけのパンフレット作り」

「発表ノート」は、画像を拡大・縮小したり、文字を書き入れたりすることが簡単で、児童が親しみやすいソフトだと思います。一般的に利用されている文書作成ソフトなどでは、写真や画像を貼り付けるだけでも、ファイルの形式や容量、ファイルの選択の手順などが問題になったりします。また、画像の移動や、文字の大きさの変更が思いどおりにできずイライラしてしまうと思います。

特に、ウィンドウを閉じると自動的に保存してくれる「自動保存」の仕組みは児童の実態に合っており、もう保存を忘れることはありません。今年の6年生は[発表ノート]の機能を使いこなして、来年度に入学する新1年生向けに「学校紹介パンフレット」を作成しました。これまで活用してきたどの文書作成ソフトやプレゼンテーションソフトよりも使いやすいソフトだと感じています。

「発表ノート」で作成した「学校紹介パンフレット」

使いやすさを実感しているから、活用が広がる

このような活用の広がりは、教員が本当に使いやすさを実感しているからだと思います。

例えば、授業で利用する事が多い[投影]機能は、教員機からボタン操作一つで大型テレビに投影できます。また授業では、画面を投影したり、消したりする機会が多くあります。『SKYMENU Class』は、個で考えさせる場面などでは教員機の画面が見えないようにすぐに投影を消したり、児童の考えを揺さぶりたいときや広げたいときにサッと参考になる教材を素早く投影したりできます。授業の実情に併せて作られていると思います。もし使い勝手が悪ければ、このような日常的な活用につながっていないと思います。

保護者懇談会でタブレット端末活用授業を体験

新入生の保護者説明会や懇談会でもタブレット端末を活用しました。

懇談会では、児童が受けている授業がどういうものかを体験していただきたいと考え、グループに1台の端末をお渡しして話し合いをしてもらいました。普段の授業と同じように、[学習者機画面の一覧表示]機能で大型テレビに端末の画面を投影しながら進めました。普段の懇談会では議論が行きづまったりするのですが、大型テレビに映る各グループの画面を見ることで進捗が意識されるのか、どのグループも活発に意見を交流されていました。本校の取り組みについてご理解を得られる良い機会でした。

新入生の保護者説明会の様子

学び合う教員集団と体制作りが鍵

本校は若手の先生が多く、タブレット端末などのICT機器の活用にも積極的に取り組む雰囲気があります。導入時に行われた講習会などをきっかけに、職員室での何気ない会話の中で、さまざまなノウハウや活用方法が共有され始めました。

また、本校は、オープンスペースの教室で互いの授業の様子が見やすい環境だということも功を奏し、「先生のあの使い方いいね、どうやるの?」といった会話が自然に起こっています。この半年間の教員どうしの学び合いの積み重ねが、今の活用状況を作っていると思います。

そして、ICT活用や情報教育を推進するための校内組織を、学校長が組織されていることもポイントだと思います。今年度、校長は高橋先生をICT活用推進主任/情報教育主任として任命しています。高橋先生は、ソフトのより便利な使い方や設定方法について、ソフトメーカーの方から積極的に情報を得てくれたり、さまざまな研究会に参加して、国の最新動向や好事例を共有してくれたりしています。このように役割を明確化し、体制を作っていくことも非常に大切なことだと思います。

平成26年8月に近隣の社会教育施設との複合施設として建て替えられた同校。新校舎には、授業に併せてレイアウトを変更できるように工夫されたオープンスペースの教室や、少人数学習や学年集会ができるワークスペースなど、さまざまな工夫が散りばめられている

授業の本質に迫ったICT活用を考えたい

平成28年度には、タブレット端末が追加で整備され、児童1人1台で活用できる環境が整います。この環境を生かして、児童が調べたり、発表したりする力をさらに伸ばしたいと思います。将来的には大学生が卒業論文を書くように、6年生がICTを使った卒論大会をすることを考えています。

今後ますます、アクティブ・ラーニングが注目されると思います。しかし、タブレット端末などを有効に使いつつ、児童が主体的に学ぶといった授業づくりは簡単なことではありません。児童の実態にあわせて、ICTを活用する目的を明確にして授業をつくる力が、さらに教員に求められます。全教員がタブレット端末の活用に慣れてきた今だからこそ、授業の本質に迫ったICT活用を考えていきたいと思います。

(2016年3月取材 / 2016年6月掲載)