授業でのICT活用

全学年で挑むタブレット端末活用

清水 修 校長大阪府泉佐野市立第三小学校は、平成27年夏に「ICT教育推進校」として、タブレット端末100台とタブレット対応授業支援ソフトウェア『SKYMENU Class』が整備されました。導入から半年という短期間で教員・児童1人1台の環境を生かした実践を全学年で展開されています。同校のタブレット端末活用の取り組みについて伺いました。

教員・児童1人1台タブレット端末100台整備

本校は、全校児童数85名の小規模校です。各学年1学級、2つの支援学級があり、あわせて8学級あります。コンピュータ教室にはデスクトップPCと授業支援ソフトウェアとして『SKYMENU Pro』が導入されています。各普通教室には平成21年度から教育用のノートPCと大型テレビが1台ずつ整備されており、校内ネットワークも敷設されました。

平成26年には各普通教室に書画カメラが設置され、ノートPCや大型テレビと組み合わせて教材提示に活用するということが日常的に行える環境が整いました。現在では、子どもが発表するときに、先生がノートやプリントなどを書画カメラで撮影して拡大提示するといった活用が日常の光景になってきています。

そのようななかで、平成27年5月に教育委員会から教員・児童1人1台のタブレット端末整備の話をいただき、同年7月末に100台のタブレット端末とタブレット対応授業支援ソフトウェア『SKYMENU Class』が本校に整備されました。同時に無線LANアクセスポイントも校内に設置され、全普通教室に無線LAN環境が整いました。

ICT支援員の協力でタブレット活用研修を実施

タブレット端末の導入は7月31日までに完了し、8月から校内研修を開始しました。教員への研修はICT支援員の方に協力してもらいました。研修では、Windowsのタブレット端末の基本的な操作を知ることから始め、授業で毎時間使うことになる『SKYMENU Class』についても理解を深めました。

教員単独でもタブレット端末を活用した授業ができるように、2学期が始まってからもICT支援員の方に教えてもらいながら、少しずつスキルアップを図っていきました。また、子どもたちに対してICT支援員の方からタブレット端末などの基本的な操作方法を教えてもらう時間を設けました。その際、支援員の方が教員機のさまざまな機能の活用方法を見せてくれたので、参加した先生方には具体的なイメージを持つ機会にもなりました。

教員の活用から児童1人1台の活用までさまざまな教科、場面で

勇和代教諭、西川聡教諭、中瀬雅人教諭

1人ひとりにID、パスワードを付与し、個人フォルダを活用

本校では、学年、クラス、出席番号で児童1人ひとりのユーザIDを作成し、パスワードとともに付与しています。また、環境復元ソフトウェアが導入されているので、タブレット端末の電源を切ると各端末内に保存されているデータが削除されます。そのため、子どもたちが作成したデータや撮影した写真は、サーバ上にユーザIDごとに生成されるデータ領域「個人フォルダ」に保存される仕組みになっています。

「かんたんログオン」でタブレット端末にログオンする1年生この仕組みを利用するにあたって、1年生から自分でログオンできるように指導しています。当初、1年生には難しいと思いましたが、「かんたんログオン」は一度教えればすぐにできるようになりました。子どもってすごいなとあらためて実感しました。

実際に運用してみて、自分のユーザIDでログオンすれば自分が撮影した写真や作品のデータをすぐに読み出せるこの仕組みは、大量のデータの中から自分のデータを探すために、難しい操作をさせたり、余計な時間を割く必要がなく、とても便利です。すでに子どもたちには定着しており、皆が自然に使っています。

5年ノートを撮影し、大型テレビに投影して発表

撮影した子どものワークシートを投影し、マーキングして説明する2学期早々に5年理科の授業で活用しました。植物を観察して書く学習で、子どもたちがワークシートに書いたものを教員機のタブレット端末で撮影。大型テレビに映しながら子どもたちの発表に活用しました。子どもの発表にあわせて、教員機でマーキングしながら提示できるので、視覚的にわかりやすい発表ができました。

『SKYMENU Class』には、[カメラ]機能で撮影したさまざまな子どものノートやプリントを並べて表示できる[画像比較]の機能や、教員が画像の上に書き込んだ内容を保存できる[画面保存]の機能もあります。次時の導入などで前時の振り返りに活用できるので、便利に感じています。

何回も描いたり消したり試行錯誤できる個に応じて繰り返し見せることができる

4年星や星座の動画を繰り返し視聴して理解を深める

星と星をマーキングで結びオリオン座を確かめる4年理科では、子どもたちにタブレット端末を1人1台持たせて、星や星座、月の動きの学習などに活用しています。例えば、冬の星座を自分たちでインターネット検索し、動画などを繰り返し見て「星座がどのように動くのか」を考えさせるといった活用を行っています。

また[マーキング]機能を使い、夜空の画像の上にオリオン座の形をなぞって描かせたりしています。自分で実際に描いてみることでより知識が定着するようになります。

タブレット端末には、何回も描いたり消したりして試行錯誤できる良さや、一斉指導で全員に動画を示すのではなく、1人1台の環境で個に応じて繰り返し見せられる良さがあると思います。特に、星や星座のように授業中に観察しにくいものが各個人で手軽に見られるのは良いと思います。

ほかにも[発表]機能が子どもたちに好評です。教員機で発表を許可すると、一番早く[発表ボタン]をタップした子どもの画面が大型テレビに投影されるので、より積極的に発表してくれるようになりました。

1年[カメラ]機能で校内を取材してまとめる

1年生は、[カメラ]機能や[マーキング]機能などを中心に活用しています。

国語の「学校のことを知らせよう」の単元では、学校の中に出掛けて紹介したいと思うものを[カメラ]機能で撮影しました。1人1台のタブレット端末を使えるので、1時間の取材だけで何十枚もの写真が撮影でき、次の時間には「個人フォルダ」に保存している自分の写真の中から紹介したいものをじっくりと選んだ上で、写真を見ながら文章を書かせることができました。これまでのようなデジタルカメラを利用した授業展開よりもスムーズにできて良かったです。また、生活科の「秋見つけ」「春見つけ」などでも同様の活用ができると思います。

縄跳びの様子をペアで撮影して確かめる体育では、縄跳びの様子をペアで撮影し合い、自分が跳んでいる様子を見て「どうすればうまく跳べるのか」を視覚的に確認するといった使い方もしています。子どもたちが撮影したデータは、自分の「個人フォルダ」に保存されます。自分のユーザIDでログオンすれば、どの端末からでも自分のデータを見られるので便利に使えています。中・高学年になれば、タブレット端末で自分の撮った写真を使って、資料を編集することもできると思うので、より効果的に使えると思います。

子どもたちが積極的に意見を書き、発表するように

自分の考えをマーキングで書き込むこれまで約半年間の活用のなかで、子どもたちがタブレット端末に積極的に意見を書き、発表しようとする姿が見られるようになりました。特に[マーキング]機能は、書いたり消したりすることが簡単に行えるので、より積極的に考えを表現できるのだと思います。

また、子どもたちは自分のノートやワークシートが大型テレビに映し出されると喜びます。タブレット端末でノートなどを撮影するようになってから、子どもたちにはノートをより丁寧に書こうという意欲が生まれています。この意欲や積極性の高まりは、学力向上にもつながると思います。

今は、すべてのタブレット端末をコンピュータ教室内の充電保管庫で管理しています。タブレット端末を授業で使う際は、コンピュータ教室まで取りに行かなければならず、授業で必要なときにさっと取り出して使えるという状況にありません。「タブレット端末を使うと、教科書や資料集などを使うよりも余計に時間がかかる」といった状況を技術面・運用面でどのように改善していくかが、今後の日常的な活用の鍵になると思います。

また今後は、全国学力・学習状況調査のA問題で問われるような学力の向上にも、タブレット端末を生かしたいと考えています。例えば朝、先生が教室に来るまでに子どもがタブレット端末を立ち上げてドリル問題に取り組む。そして、先生がタブレット端末上でその結果を確認して指導に生かすことができれば、効果が上がると思っています。

まだまだ私たちは手探りの状態です。しかし、タブレット端末を使うための授業をするのではなく、授業の「ここで使える」という場面を考えて使いたいと考えています。どのような場面で、どのように使えば、子どもたちがより積極的に学習活動に取り組めるのか。さまざまな事例を選りすぐりながら効果的な活用方法を考えていきたいと思います。

(2016年2月取材 / 2016年4月掲載)